尿検査について

尿検査はなぜ行う?
 子どもの腎臓病の約半数は慢性の腎疾患です。
 最近の生活指導法や治療法の進歩によって,早期発見後の適切な生活管理と治療で,悪化を阻止することができるうえに,その一部は全治させることもできることが判ってきました。
 学校を中心として行われている健康診断のための尿検査は昭和48年から始められています。

尿検査で何が分かる?
 検査は尿蛋白・尿糖・尿潜血の3項目で,それぞれ蛋白質,糖分,赤血球を検出します。これらは身体に必要なものなので,通常は尿に出てくることはありません。なんらかの問題があったときに尿から検出されます。
 体調により,尿にプラスの反応が出る場合もありますが,その場合でも念のため必ず二次検査を受けてください。

尿蛋白が陽性(尿潜血が陰性)の場合
 一過性の蛋白尿(生理的蛋白尿)の可能性がありますので,まず再検査します。尿の濃さによっても検出する感度は違いますので,次はどのくらいの量の蛋白が出ているのかを調べます(定量検査)。
 尿蛋白は通常1日量で評価しますが,外来では尿蛋白/尿クレアチニン比(1日尿蛋白量に相当)を用います。
 尿蛋白は,腎臓,特に糸球体から漏れてきます。ネフローゼ症候群,糸球体腎炎,腎硬化症,糖尿病性腎症などさまざまな腎臓病が疑われます。

尿潜血が陽性(尿蛋白が陰性)の場合
 尿に赤血球が混入しています。腎臓だけでなく,尿管,膀胱,尿道(下部尿路)からの出血が考えられます。
 女性では,月経中でも陽性になることがありますので,その期間を避けて再検査します。持続的に尿潜血陽性の場合には,尿の成分を詳しく顕微鏡で見る「尿沈渣」という検査を行い,実際に赤血球数(RBC)がどのくらい出ているか調べます。
 赤血球の形をみると,変形した赤血球が多い場合は糸球体から出てきている可能性が高く,少ない場合は下部尿路からの可能性があります。このように尿検査で初めてわかる血尿を顕微鏡的血尿といい,肉眼で判断できる血尿を肉眼的血尿といいます。
 肉眼的血尿が認められる場合は,泌尿器疾患(膀胱腫瘍,尿路結石など)の可能性も考えられます。そのため次の検査として超音波検査などの画像検査が必要になります。
 顕微鏡的血尿で変形赤血球が多く,IgA腎症などの糸球体腎炎が疑われる場合は,腎生検を行う場合があります。

尿蛋白・尿潜血がともに陽性の場合
 尿蛋白,尿潜血がともに陽性の場合には,糸球体に炎症が起こり,蛋白や赤血球が糸球体から漏れ出ている可能性があります(糸球体腎炎)。
 赤血球は糸球体の毛細血管が切れて出てくるため,炎症の強さを反映します。また,蛋白は障害された糸球体から漏れてくるので,炎症の強さとともに障害の広さも反映します。従って,血尿・蛋白尿がともにある程度認められる場合は,炎症が強く起こっている可能性がありますので,早急に腎生検を行うことが奨められます。

尿糖が陽性の場合
 尿糖は,血糖値がある一定以上になると腎臓から糖分が溢れてしまうために検出されます。そのため尿糖陽性の場合は,糖尿病を疑い血糖値やHbA1c(ヘモグロビンエイワンシー:グリコヘモグロビン/糖化ヘモグロビン)の値を調べます。ただし,血糖値が高くなくても陽性になる場合(腎性尿糖)もあります。


 さらに詳しく知りたいときは,>>茨城県医師会 「学校検尿の指針(腎臓病・糖尿病)平成25年6月版(PDF)」をご覧ください。